ロクな男はいませんでした

2011-09-16

それまで付き合った男性にロクな男はいませんでした。その男も、ことあるごとに手を上げる最低の人物でしたが、出会った当初の逞しい素振りに、幼くして両親を亡くした私には、こんな父親がいたらよかったのにと、存在しない父親の影を重ねてしまって、度重なる暴力にも逃げられないように感じていたんだと思います。しかし、その日の夜は泥酔していて、手がつけられず、思い切り殴られた際には命の危険も感じて、もうこれ以上は無理だと悟って家を飛び出したのです。両親はいませんし、地元でもずっと不良グループに所属していた私には帰って歓迎される田舎も存在しません。その日は冬だったので、携帯電話ひとつしかないひとり身の私に、寒風が突き抜けていくようでした。もうどこにも行き場所はないのですが、死ぬ勇気もない私は、凍える指でその日の宿を提供してくれそうな男性を探していたのでした。それが、「神待ちサイト」でした。寒空に心も凍らせながら、最初に連絡をくれた男性の家に転がり込んだのですが、その50代の自営業の男性は、余計なことは何も言わずに温かいコーヒーを差し出してくれました。終始言葉の少ないその男性は居酒屋を経営しているのですが、経営状態は決して芳しくないようでした。次の日から、恩返し代わりに、店の手伝いをさせてもらいながら、同棲生活のようなことを始めたのですが、今では店の常連客からは夫婦だと思われています。婚姻届は出してはいませんが、それも悪くはないな、と思い始めている今日この頃です。

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